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2010年11月14日 (日)

能面・能装束入門 第七回

・能装束の分類

装束は着付け類、上着類、袴類に分けられる。演者は一番下に肌着をつけ、次に着付け、袴(着けない場合もある)、上着を順に重ねて着ていく。

着付け類
摺箔(すりはく)…無地の小袖に金や銀の箔で模様をつけたもの。
縫箔(ぬいはく)…刺繍と箔で模様をつけた小袖。
厚板(あついた)…地厚の織物で、力強い模様が施されている。

上着類
唐織(からおり)…様々な色糸で模様が織り出されている小袖型の装束。
長絹(ちょうけん)…袖が広く、胸と袖部分に組紐がつけられている。
水衣(みずごろも)…生地の薄い広袖の装束で能独自のもの。
袴類
大口(おおくち)…しっかりとした生地で作られた両横に広がった袴。
半切(はんぎり)…大口に似た袴で華麗な模様が施されている。
指貫(さしぬき)…裾に通してある紐を膝の下で閉めて袋状にする袴。

・能装束の着付け

普通、舞台で用いられる能面の100種程度に比べ、装束の種類はさほど多くない。単(ひとえ)・袷(あわせ)の別、織り方の変化や、無地か模様かといったことを別にすると、着付けのたぐい六、上衣(小袖の類)六、外衣(袍(ほう)の類)九、袴のたぐい四といった程度で、基本の扮装の類型は90種程度である。しかし、装束の取り合わせや、つけ方(唐織を例にとれば、ワンピース的用法のほか、ツーピース的なつけ方、右袖脱いだ着方など六通りの変化がある)、単と袷の違い、帽子、烏帽子、冠、仮髪などの変化、鬘(かつら)を締める鬘帯(かづらおび)、また腰の前に垂らす腰帯の選択などで、類型を破るくふうを凝らす。これも、基本を極端に少なくして、無限を表現しようとする能の理念によるものである。

着流し(きながし)…女性役の代表的な扮装で、袴を付けずに唐織などを着る方法。
腰巻き(こしまき)…小袖の上半身部分を袖を通さずに腰に巻き付ける方法。
肩脱ぎ(かたぬぎ)…長絹などの右袖を脱いで後に巻き込む方法。

着付例↓
http://bit.ly/aD99II

・能装束の効果

能装束には細かに揺れ動く縮緬(ちりめん)の類を用いないから、そのデザインはむしろ直線的な明快さ、張りの強い材質の重厚さに貫かれ、木彫りの能面と、幾何学的に抽象化された演技とに調和する。また様式化が極度に進んだため、むしろ面や装束が演出を規制するともいえる。たとえば、若く美しい女性の役は「紅(いろ)入り」といって赤い色の装束を用い、母親の世代や中年以降は「紅(いろ)無し」、つまり赤を用いず、これを演出の大きな基準とする。3年の孤閨(こけい)に耐えかね、夫を恨みつつ死んでいく「砧(きぬた)」のシテを、新婚まもない妻とし「紅入り」とするか、性的に円熟した「紅無し」の年齢に設定するかは、大きな曲目の解釈の相違である。
また胸元にわずかにのぞく襟の色の選択一つによっても、演出が左右されるほどである。曲目や流儀により決まりの組合せがあり、模様まで指定される場合がある。
昔は専門の物着方(ものきせかた)がいたが、現在では後見が着せる。同じ装束でも時代によってつけ方に変化と洗練がみられるのは、女性の役の基本の扮装に、五流の能と山形県の黒川能に大きな差があることをもっても知られる。
世阿弥時代の絵には、鬼の役が「けがりは」とよばれる沓(くつ)を履いているが、今日では履き物はいっさい用いず、すべて白足袋(しろたび)で、足の運びの美しさを強調する。

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