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2009年12月 6日 (日)

寺子屋Bクラス「風姿花伝」講読会のご案内

寺子屋素読ノ会では、Bクラスにて世阿弥「風姿花伝」(毎月第一月曜 19:30-21:00)を講読しています。
今回はその講座内容を過去のテキストよりご案内いたします。


■世阿弥とは

室町時代の能楽の大成者。実名、観世三郎元清(一三六三~一四四三)。幼名、鬼夜叉、または藤若。中年以降の芸名を世阿弥陀仏と称した。
 申楽に音曲・作曲面で改革を行い、今日の能の基礎を確立した観阿弥の一子で、二代目観世太夫を継承する。

 父観阿弥より能役者としての英才教育を、パトロンである将軍足利義満、北朝公家二条良基等により庇護、寵愛を受け高度な上流教育を享受する。稀代の美童にして歌舞の逸材でもあった世阿弥は、天賦の才に加えこれら宮廷文化を存分に吸収。民衆芸能申楽を美と幽玄を主とする総合舞台芸術、能へと昇華・大成させることとなる。

 自身、太夫として一座を率いる看板役者であったが、今日なお盛んに演能される数々の名作『高砂』『井筒』『西行桜』等の作者でもあり、本作『風姿花伝』をはじめとする二十一にも及ぶ能芸論書の著作者、理論家でもあった。演者・作者・理論家を一身に兼ね備え、世界芸術史的にも稀な天才と評され、六百年を経た今日においても代表作『風姿花伝』は、その普遍的価値により海外でも訳出され、多くの読者に親しまれている。

 世阿弥、観世家の系譜は、まず父、世阿弥をしのぐとまでいわれた天賦の歌舞の才に恵まれた長男の十郎元雅。そして次男の元能がいる。しかし、元雅は早世、元能は出家。世阿弥の芸と理論は、甥の三郎元重(音阿弥、三世観世太夫)と女婿、金春禅竹に受け継がれていった。特に禅竹は、世阿弥の歌舞と仏教的世界に一段の美的深化と理論をもたらし、「芭蕉」「定家」「小塩」「雨月」など、幽玄な能の名作を創作している。その孫の金春禅鳳も名手であり、今日の金春流の基礎を確立した。
 今日の宝生流(元大和猿楽外山座)の流祖、宝生太夫は、観阿弥の長兄。

■世阿弥(観世座)の系譜

※観世大夫系統図


■能の歴史

※奈良→平安→鎌倉→室町時代の芸能チャート

■能の各役・流儀一覧表

※シテ方・ワキ方・囃子方・狂言方の各流儀と人数

■風姿花伝とは

能の大成者、世阿弥が亡父観阿弥の遺訓を基に著した、日本最古の能楽理論書である。『花伝書』の名称でも知られる本書は、「花」と「幽玄」をキーワードに、日本人にとっての美を深く探求。体系立った理論、美しく含蓄のある言葉、彫琢された名文で構成される、世界にも稀な芸術家自身による汎芸術論として位置づけられよう。

 本書は一子相伝の秘伝書ゆえ、日本において明治を迎えるまで観世家・金春家に深く秘蔵され、一般の目に触れることはなかった。明治末年、吉田東伍博士『世阿弥十六部集』として発刊。ついで昭和二年岩波文庫版『花伝書』が上梓されるに及んで、広く一般読者の知るところとなった。
 全体は七編から成立する。第三編までが一四〇〇年(応永七年、著者三十八歳)、四・五編が一四〇二年、六・七編が一四一二年に、それぞれ成立。完成までに約二十年の歳月を要している。この間、増補・改訂がなされた可能性も高く、本書成立には複雑な過程が想定される。第一から第五までが本編、第六・第七は外伝とでもいうべき内容だ。各編の要約は下記。

●各篇の要約


申楽の歴史を簡潔に述べ、この道を行こうとする
者へ守るべき芸の本流を示す。本編ヘの巻頭言として好色・大酒・博打への戒めを掲げる。

第一 年来稽古條々
申楽者の生涯を各年代別に分け、修行と工夫の方法を説く。たとえば幼、少年期の「時分の花」、青年期の「初心の花」。いずれもまことの花とはいえない。一時の名声に惑わされることなくまことの花を会得することこそこの道の奥義であるとする。まことの花を得た、ただひとりの例として観阿弥の老い木に残る花の舞台を引く。今日、教育論・コーチングの視点から見ても示唆に富む一編。

第二 物学條々
申楽芸の根本である物真似の技術を女、老人、直面、物狂など九つの題材別に俯瞰する。鬼の物真似は「上手く真似るほど面白くなくなる」という秘事。また無上の大事「老人の舞い姿」など、深い人間観察と舞台経験に基づき物学(ものまねび)の本質に触れる。

第三 問答條々
演能に際しての具体的、実践的演出方法および、能に花を咲かせるための工夫と秘訣を間答体で説く。
「開演前の客席を見るだけで、その日の能の出来・不出来を占う方法」「序破急とは」「立会い勝負を制するには」「なぜ下手は、下手なのか」「能の位とは」「花とは何か」。問答のひとつひとつに知ることと会得することの根本的な違いが鮮やかに描き出されている。

第四 神儀に云わく
元来、別書であった申楽起源伝承が後に『風姿花伝』第四として位置づけられた。申楽者に芸の正統性に対する誇りと家芸を重んじる精神の自覚を促すために書かれた一編。

第五 奥儀に讃歎して云わく
「その風(伝統)を得て、心より心に伝えていく花」として『風姿花伝』書名の由来を述べる。大和申楽と近江申楽、申楽と田楽の芸風の違いを説きながら、芸の築き方や舞台に立つ心構えを示す。また芸能は「諸人の心を和ませ、感動を与える幸福の根本」であると明確に定義づけ、欲得を萌しこの道を廃れさせることのないよう強く戒める。

第六 花修に云わく
花を究め、能の本道を知る手立てを表す。具体的には、まず作能の手引きとして名作の条件を示す。「音曲・働き一心の口伝」「強い・幽玄、弱い・荒いの違い」「釣合うということ」などの例を引きつつ、次第に「能を知る」ということへ導いていく。

第七別紙口伝
九項にわたる口伝を世阿弥独自の名文句で綴る。「年々去来の花(初心忘るべからず)」、「秘すれば花」「老い木に花の咲くごとく」。
能の永遠のテーマである「花」のイメージをあらゆる角度から見つめ、本質に迫ろうとしたものである。一子相伝とし、「継ぐもの、守るものを知る」者にのみこの書が伝えられることを記して『風姿花伝』は結ばれる。


■風姿花伝の名言

●音曲においての曲、
舞においての品・風情は上手だけのもの。

●物真似には似せないという位がある。

●年々去来の花。

●初心忘るべからず。

●秘すれば花なり。

―『風姿花伝』第七別紙口伝より


■[クイズ]
『風姿花伝』の中でもっとも有名な、以下二つの名言。この言葉の正しい意味を下の二つから選んでみてください。


「秘すれば花なり」の正しい意味は…

①本当に重要なものは、他人から隠しておかなければならない。
②他人に隠しているものは、本当は大したものではない。

 答え〔  〕


「初心忘るべからず」の正しい意味は…
①初志貫徹すべきである。
②初心のころの未熟な考えやわざをいつまでも捨てない。

 答え〔  〕

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