« 日本人は、「畳に正座する」民族である。第一回 | トップページ | 寺子屋、明日2/12いよいよスタートです! »

2009年2月10日 (火)

日本人は、「畳に正座する」民族である。第二回

パラグラフ2【正座とは】


 正座は、正しくは「正坐」と書きます。日本の伝統的な正しい座り方。まさかと思いますが、正座をしたことのない若い読者もいるかもしれない。それは、両足をそろえ、膝を折りたたんで、かかとの上にお尻をのせる座り方。足首はまっすぐにし、足の甲が床についています。
 さて、それでは正座の歴史・意味・現状について概観していきましょう。

・正座という呼称

 意外に思うかもしれませんが、正座という名前が生まれたのは、せいぜい60~70年前のこと。戦前の修身の教科書で使われたのがはじめです。それまでは「端座」などと呼び、江戸以前は「かしこまる」「つくばう」などと一般的には呼ばれていました。

・正座の2つの意味

 江戸幕府が礼法として、正式な座法と定めたことにより日本中に浸透していった正座。戦国時代までは、「あぐら」「立て膝」が、貴賤問わず一般的な座り方でした。江戸の為政者は、正座のもつ2つの意味に目をつけたのです。ひとつは、「かしこまる」「つくばう」から連想されるように、正座をする相手に「従順」「屈服」の姿勢を求めたもの。土下座は、正座をして手を前につき謝ること。朝鮮半島では、正座は罪人の座り方とされている。
 もうひとつが、「礼」としての座法です。これは茶道の発展・普及と手を携えて、広く日本中に浸透していった。「正座=礼」が、日本の習慣と生活様式の中で、イメージとして自然に強化、確立されていくのです。

・正座は日本独自のもの?

 中国の秦の始皇帝陵から出土した陶俑、イースター島のモアイ像、外来の神像・仏像…。これらすべてが「正座」をしており、イスラム教モスクで、正座が座拝のカタチであることは、周知の事実です。正座は日本独自のものではありません。
そもそも正座を、より早く生活習慣として取り入れ、定着させていたのは中国です。そして、日本が他の文物とともに、この生活習慣を中国から輸入したものと推測されます。
 もともと中国人は、日本の着物のように下着として肌襦袢を着ていました。が、日本の褌のような、いわゆるパンツがありませんでした。あぐらをかいたり、体育座りでは股間が露呈してしまう。そのため、春秋戦国時代以来、正座が正式な座法とされていた。中国人がパンツをはくのは相当時代が下ってからのこと。日本に入ってきた褌は、もともとポリネシア系の文化。イースターのモアイ像も褌をつけています。

 さて、中国の正座はその後、唐の時代まで続きますが、胡人やアラビア人により、外来文化が流入し、家には土間ができ、椅子での生活が徐々に広がってくる。そして、宋の時代には正座の習慣は完全に消滅してしまうのです。こうして本家の中国では、正座は途絶え、それを輸入した日本では、文化として脈々と受け継がれていくこととなりました。

・江戸時代まで、正式な座り方はなかった

 平安時代の神像には、座禅を組んだもの、正座をしたものの2種類が混交しています。また絵巻を見ても男性は「立て膝」か「あぐら」、女性は「横座り」など、様々なヴァリエーションがあり、儀式の場であってさえ人それぞれ自由な座り方をしており、決まった座法がなかったことがわかります。
 室町時代、正座は神前・仏前で礼拝する時、目上の人に対する場合、あるいは茶席での立ち居など、ごく限られた場合だけの座法でした。
さらに時代が下り、江戸幕府により、茶道、小笠原流礼法に従って、正座が正式な座法としてはじめて制定される。これは八代将軍徳川吉宗以降のことだとされています。そして畳が庶民の家にも普及する江戸中期以降、正座は広く日本中に伝えられ、浸透していくのです。

・正座は「平和な座り方」?

 正座文化を論評する際によく耳にするのが「正座=平和の座法」説。戦国時代以前、一般的であった「あぐら」や「立て膝」は、姿勢がラクというだけではなく、瞬時に立ち上がることができる実戦的・好戦的な座法である。かたや正座は、徳川幕府が開かれ、日本中に戦がなくなった時代の座り方。立ち上がる時には、まずつま先を引き起こさねばならず、立つまで二挙動かかる。ゆえに、とっさに相手を襲うことも、防ぐこともできない「従順」で「平和」な座法だとしています。あぐらをかいた主君が、臣下に正座を強いて、恭順させるとともに、不意の攻撃を制したもの。これがこの説の根拠のようです。

 しかし「平和説」はともかく、この根拠には疑義がある。実際に立ってみると、結果は逆だからです。あぐらは立てない。正座は瞬時に立って、前に出ることができます。また、片膝立てではあぐらのように尻を落としていると立てない。ただし、能のシテ方のように、重ねたかかとの上で、尻を半分浮かせていると、正座のようにすぐ立てます。そもそも、居合術の座技はすべてが正座。あぐらでは立てないし、刀も差せないからです。つまり、正座は決して攻撃を封じるため武術から生まれた座法ではありません。むしろ「平和をめざす」という意味でいえば、礼を重んじる仏法ないし茶道の精神から広まった、とすべきでしょう。

・おらが村の正座

 日本の各都道府県別に、正座の方言を集めてみました。ぼくが子供の頃よく耳にした正座をさす言葉は、実は近県の方言だったことがわかりました。ただしこの中にはすでに使われなくなった言葉もあります。あなたの出身地で「正座」は、どのように呼ばれていいますか?

北海道 おっちゃんこ
山形 ねまる
福島 ねまる
茨城 ねまる
栃木 ねまる
群馬 おつくべ、おつくべえ、おっ(つ)くべ、おっつくべえ
富山 おつくばい、おつくわい
福井 おちょきん
長野 おかしま、おつくべ、おつべく、おつんべこ
岐阜 つくなる、つくばる
京都 おっちん、おまん
大阪 おまん
鳥取 えーちゃんこ
島根 えーちゃんこ
岡山 おじんじょ、べべちゃんこ
広島 じんじょう、ちゃんこ
徳島 おかこまり、おかっこ、おかこまり、おかっこまり、おちんこま
香川 おかっこ、おかっこまい、おかっこまり
愛媛 おかっこ、おちょっぽ
高知 おかっこ
鹿児島 きんきん
沖縄 膝まずき

|

« 日本人は、「畳に正座する」民族である。第一回 | トップページ | 寺子屋、明日2/12いよいよスタートです! »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本人は、「畳に正座する」民族である。第二回:

» いつかすること [いつかすること]
都会の喧騒を離れ、羽田へ向かった。 北海道の東の小さな空港へ向かう最終便へ乗り込. [続きを読む]

受信: 2009年2月11日 (水) 01時04分

» 居合刀(模擬刀)の選び方4 − 鍔 [居合刀を選ぶ!]
居合刀を拵える際には様々な金具が必要になりますが、その金具類の中で、装飾面でも、実用面でも一番重要になるのが鍔です。刀が鞘に納まった状態でも、抜き身の状態でも、常に見える部分になりますし、この鍔の重量によって居合刀のバランスが変わってきます。鍔の形には大きく分けて、丸鍔、角鍔があり、それぞれに通常の鍔と透かし鍔があります。本来、真剣用に造られた鍔というのは、材質も鉄(錬鉄)や赤銅(しゃくどう:銅と金の合金)な�... [続きを読む]

受信: 2009年2月21日 (土) 17時43分

« 日本人は、「畳に正座する」民族である。第一回 | トップページ | 寺子屋、明日2/12いよいよスタートです! »